温かな日々を夢見た。薄氷の平穏。積み木の天秤。瓦礫の上の揺籃。眠りにつけば二度と訪れないような、残酷で優しい昨日。— Heaven's Feel
それは今までとは何もかもが違う、隠された聖杯戦争。穏やかな今を守るため、衛宮士郎はマスターである事を受け入れる。セイバーは己がマスターの決意を良しとし、主の剣として戦いに身を投じる。遠坂凛はマスターとしてではなく、誇り高い魔術師として夜を駆ける。そして。戦う術のない彼女は、せめて彼らの帰りを待つ“日常”として有り続けられるよう願った。戦いは静かに、毒が沈殿するように進行していく。仮面の暗殺者。老魔術師の思惑。真価を発揮する紫の騎兵———士郎の窮地を救ったライダーは敵なのか味方なのか。張り巡らされた罠は少年を追い込み、彼から戦う力を奪い、また、守るべきものを再認させる。これは生き残る為の戦いではなく。大切なものを守る為の戦いだと。 理想と現実はカタチの違う歯車だ。噛みあえば軋みをあげ、血のような火花を散らす。裏返る物語。聖杯はその真実を見せ始める。多くのマスターとサーヴァントが脱落していく中、残された少年に神父は騙る。「それでも———あの娘に、守る価値があるのかね?」では、最後の選択を。おまえは誰を救い、何を捨てる事ができるのか?絡み合った運命の糸は、ここに終局を迎える。 剣のマスター、衛宮士郎。宝石の魔術師、遠坂凛。ふたりが守ると誓った、囚われた黒い少女。省みる事のなかった十年を清算する為、最後にして最大の戦いが幕をあける。……その答えは、結末にのみ。